平和憲法九条を守る

平和な国を作る方法は、あるんです!

戦争放棄をうたっているのは。日本だけ?

いいえ、国連192カ国で、内戦を含めないとすると多くの国が戦争をしない国です。内戦を含めると、厳密には8カ国が戦争放棄を宣言している国です。この中で注目すべきは、南米の「コスタリカ」です。

軍隊をいっさい持たない国

南米に、詳しい伊藤千尋さんのお話です。(以下他のホームページ抜粋)

本当に軍隊を持たない国

質問者
日本のほかに世界でただ一つ平和憲法を持つ「軍隊のない国」として、中米のコスタリカへの関心が、ここ数年日本でも非常に高まっています。伊藤さんは、何度も現地へ取材に行かれ、NGO「コスタリカ平和の会」の共同代表にもなられていますが、コスタリカの現状について改めて教えていただけますか?

伊藤
「戦争を放棄する」「軍隊を持たない」と定めた平和憲法を持っているという点では日本と同じですね。ただ、日本と違うのは「本当に」軍隊を持っていないということです。

日本は平和憲法といいながら実際には自衛隊を持っていますが、コスタリカにいるのは6000人の警察官と、2000人の国境警備隊のみ。警察といっても棍棒しか持っていなくて、ピストルさえ携帯していません。国境警備隊にも軍艦や戦闘機はなくて、ボートやセスナだけ。だから、「軍備」という感じはまったくないですね。あちこちで内戦が頻発してきた中米地域においてですから、なおさら驚くべきことだと思います。

質問者
その平和憲法は、どのような歴史的背景からつくられたものなんですか。

伊藤
きっかけは1948年の内戦です。このとき、わずか1カ月半の戦いで2000人が亡くなりました。当時のコスタリカの人口は約70万人ですから、かなり大きい数字です。

それで、内戦後に新政府が誕生して新憲法がつくられることになったときに、「二度と内戦をしないようにしたい。そのためには、軍隊を持たなければいい」という意見が出たんですね。そもそも軍隊があり、武器があるから戦争をしようとしてしまう。それをなくせば戦争という手段を考えることもないだろうという発想です。

質問者
それが新憲法に組み込まれた。

伊藤
そうです。1949年にできた現行憲法の第12条に、「コスタリカは常備軍を持たない」と明記されています。

それからもう一つ、これには経済的な意味もあったんです。コスタリカは決して経済的に豊かな国ではなかった。それなのに莫大な軍事費を使う、そんな余裕が自分たちにあるのかという声が出た。そして、今こそ軍事よりも平和と発展、具体的にいえば教育にお金を使おうという結論が出されたんです。軍備にお金を使っても、10年後に国が発展しているとは思えない。ところが、教育にお金を使えば10年後には発展となって返ってくるはずだ、と考えたんですね。理想論ではなく、むしろとても現実的な判断です。

実際に、軍隊をなくしたことで浮いた予算はそのまま教育費に回されました。当時の国家予算の3分の1です。「兵士の数だけ教師を、兵舎を博物館に」というスローガンをつくって、それを本当に実現させてしまったんですね。

それによって、コスタリカは世界でもたぐいまれな教育国家になりました。識字率は97%。世界でも日本の次ぐらいの高さじゃないでしょうか。中米諸国ではもちろんダントツですね。

自分の国でなく周りの国を平和にする

質問者
軍隊をなくすという決定がなされたときに、「他国から侵略されたときはどうするのか」という議論にはならなかったのでしょうか。

伊藤
それは当然ありました。そこでどうしたか。南北アメリカ諸国が参加する「米州機構」で発効された「米州相互援助条約」、通称「リオ条約」という条約があります。加盟国のどこかが攻められたら、他の加盟国はその攻撃された国を助けて戦うという集団安全保障の条約です。コスタリカも、軍隊をなくすと同時にこれに加盟しました。ただし、加盟の際に「我が国には軍隊はないから出せない。かわりに別の方法で攻撃された国を助ける」と宣言して、リオ条約もそれを承認しています。

また、自衛権は否定していませんから、仮に他国に侵攻されたときには、大統領が国民に呼びかけて義勇軍をつくることはできます。今のところ、実際には一度も発令されたことはありませんが。

質問者
「軍隊のない国」として脚光を浴びる一方、インターネット上などではコスタリカへの批判の声も目立ちます。軍隊はないけれど警察が軍隊なみの力を持っている、アメリカに基地を提供している、軍隊なしでやってきたのは親米路線をとってアメリカに守られてきたからだ、など…。

伊藤
そのほとんどは、批判というより間違いだらけの誹謗中傷ですね。警察といってもピストルも持っていないのはさっき言ったとおりだし、アメリカに基地を提供しているという事実はない。むしろ、アメリカがコスタリカの隣のニカラグアの内戦に介入したとき、「コスタリカに飛行場をつくらせてくれ」という申し入れがあったのを拒否したくらいです。

親米路線というのも正しくない。そもそも中米というのは、アメリカのすぐそばでしかも小さな国が多く、アメリカの意向に沿わないとやっていけないというところがある。そんな中で、コスタリカは今の基地の話もそうですが、アメリカにそのまま従うことはしないという姿勢を示しています。別にすべてにおいて反米というわけではない。けれど、無条件に従うわけでもない。そういうスタンスをきっちりととっているんです。

質問者
リオ条約という集団安全保障に加盟していることに対する批判もあります。「結局ほかの国の軍隊に守ってもらっているのなら、日米安保を持っている日本と変わらない」とか。

伊藤
大事なのは、リオ条約は集団安保であって日米安保のようなアメリカとの2国間同盟ではないということです。それも、一方的に守ってもらっているのではなくて、他の国に何かあれば助けるというギブ&テイクの関係。しかもコスタリカはそこで、戦争が起こったら負傷者の手当てや難民のケアをする、さらには普段から紛争が起こらないように平和努力をするといった、軍事力ではない役割を果たすと言っているわけです。それも日米安保とは大きく異なる。

それからもう一つ、コスタリカがこれまで軍隊なしでやってこれたのは、そうして自分の国だけではなく周りの国々の平和をも守るための努力をしてきたからでもあるんです。1980年代に、当時のアリアス大統領が、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラの内戦を対話によって終わらせるのに大きな役割を果たして、ノーベル平和賞を受賞しました。そういった努力をしてきたからこそ、周りの国も「コスタリカは平和の国だから」といって認めてくれるし、尊敬もしてくれる。実際に、コスタリカの人に「軍隊がなくて、侵略されたら危険だとは思いませんか?」と尋ねると、みんな「我々の国は、侵略されないような努力をずっとしてきている。だからそんな事態は想像もできない」というんですよ。

軍隊の第一義は国民を弾圧すること

質問者
一方、もう一つの「平和憲法の国」日本では最近、その平和憲法を変えようという動きが加速化していますが、伊藤さんはこれについてどうお考えですか。

伊藤
まず、多くの人が誤解していると思うのは、自衛隊を「国民を守るもの」と考えていることです。脳天気にそんなことを言っていられるのは、軍隊について何も知らないからですよ。軍隊というのは、そんな甘いものじゃないんです。

中南米、ヨーロッパ、アフリカと、世界中の軍隊を見てきて思うのは、軍隊の第一義は「国民を弾圧すること」だということです。その時々の権力を守り、そのために国民を弾圧する。それが軍隊の本質なんですね。守るものは権力であって国民じゃない。かつての日本軍もそうで、第二次世界大戦のとき、沖縄戦であれだけの人が死んだのは、日本軍に「国体を守るためなら国民はどうなってもいい」という考えがあったからです。

自衛隊はどうか。そもそも自衛隊が「警察予備隊」として最初につくられたとき、その目的は「在日米軍の家族を守ること」だったんですよ。警察予備隊設立当初の隊員の数は7万5000人。ちょうど当時日本にいた米兵の数と同じです。朝鮮戦争が起こって、米兵がみんなそちらへ行ってしまい、その家族だけが日本に残された。それを守らなくてはいけないということで警察予備隊がつくられたんです。あと、「国内の左翼の暴動や革命の動きに備える」という目的もあったけれど、いずれにしても自衛隊というのは、スタート時点から国民を守るためのものではなかったわけですね。

質問者
「自衛隊員は国を守るためにあんなに頑張っているんだから、憲法で認めてあげないとかわいそうだ」という意見も目立ちます。

伊藤
それは、何かが起きたときに、自衛隊が自分に銃を向けるかもしれないという可能性をまったく考えていない意見ですよね。自衛隊員一人ひとりはいい人かもしれないし、かわいそうかもしれない。しかし、いざとなったとき、自衛隊は、軍隊は、人というレベルではなくて国家の意思で動くんです。国家の命令によって国民に銃を向ける可能性は十分ある。現に、世界中のどこの国でもそのようなことは、起こっていることですよ。自分に銃を向けるかもしれない相手に、そんな甘い情をかけるべきじゃないんです。

いとう ちひろ 1949年山口県生まれ。
1979年に朝日新聞入社。中南米特派員、バルセロナ支局長、
ロサンゼルス支局長などを経て、現在は『論座』編集部に所属。
著書に『人々の声が世界を変えた!』(大村書店)、
『たたかう新聞 ハンギョレの12年』(岩波書店)など。

伊藤さんのコメントをそのまま、抜粋させていただきました。



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